我が家では例年、クリスマスの1ヶ月前くらいになるとクリスマスツリーを倉庫から出し、リビングに飾る。飾り付けは子供達が担当する。はっきり覚えてはいないけど、たぶん長女が2〜3歳の頃から始めたと思う。
僕自身はこの手のイベントごとについては無神経で、下手をすると忘れてしまいそうになる。家庭の祭事に敏感なのは、やはり妻。11月も終わりに近づく頃、「もうそろそろクリスマスツリーをださなきゃ」と、勝手にソワソワし始める。
子供達はこのイベントをとても楽しみにしている。「早く早く!」と大騒ぎをして、ツリーが箱から出されるのを横ではやし立てる。
このクリスマスツリーを初めて組み立てた時、「やたら大きいのを買ったな」と思った。子供達も当時、組み上がったツリーを眺め、すごいすごい!と両手を上げて喜んだのだった。1.5mほどはあるので、小さな子供にしてみれば「大きな木」なのだと思う。
しかし、どうやら今年は例年と様子が違う。組み上がったツリーを眺め、まず長女の顔に不審な空気が漂う。
「、、なんか今年のツリー小さくない??」
僕と妻、顔を見合わせる。
そう言われてみれば、横から見るとツリーと長女の対比が、なんとなくおかしいような気がする。次男まで「そうだよ、なんか小さい!」と言い始める。小さいツリーに替えたのか?!と詰め寄る子供達。そんな訳はない。例年通りのツリーである。
そこでようやく妻が気付く。「ツリーが小さくなったんじゃなくて、あなた達が大きくなったのよ」と。なるほど。たしかに子供達の背が急激に伸びたせいで、それまでツリーを眺めていた角度と全く違って見えるのだ。
僕、感慨の念を抱く。そうか、そんなに成長したのか。
それでも子供達は納得がいかない。次男はプラスチックとスチールで作られたツリーを指差し「水をやらなかったから枯れたのだ!」と、真剣な顔で両親に文句を言い始める。
しかしツリーが組み上がると、二人とも驚くほど熱心に飾り付けを始める。こういう時の彼らの熱量は目を見張るものがある。
配色のバランスがどうだと云々言いながら、親が手伝う暇もなく、二人だけで黙々と飾り付けを終わらせる。その様子を眺めながら、すぐにツリーを追い越すくらい大きくなるんだろうな、と思う。
いつまでも「水やりをしないからツリーが枯れたんだ」と、可愛い文句を言ってくれるわけではない。そう考えると、急に寂しいような気持ちになる。
もうちょっと。あとしばらくの間、急成長はしないで欲しいなぁ、と考えてしまう。